世界王者プーンサワット・クラティンデーンジム(タイ)挑戦に敗れ一度は引退を決めた2連敗中の男、木村章司(花形)選手が、20ヶ月ぶりの再起戦に挑んだ。対戦相手はプーンサワットに勝ち、世界王座を手にした実績を持つ 李 冽理(横浜光)選手。
現在はWBA世界Sバンタム級5位、WBCではフェザー級7位にランクされ、2階級制覇を狙う現役バリバリ。それに対し、木村選手は元日本王者の肩書きがあるもののノーランク。
「どっちが勝ちますかねェ」
「やっぱりブランクは大きいよ。続けて真面目に練習してた方がいいんじゃないの」
これはごくまともな一般的考え方だと思う。
しかし、試合は木村選手が僅差の判定をものにして、超ビッグな勝利をものにした。勝利が決まった瞬間、師匠である元WBA世界フライ級チャンピオン花形 進 会長と抱き合って喜んだ勝者は、この試合が決まった昨年11月に仕事をやめボクシング一本に賭けていた。
「自分へのけじめ。あの世界戦は自分も悔いが残ったし、会長も同じ思いのはず」
この勝利の報を知ったボクシングファンからは、「花形イズムですかねェ」という言葉が寄せられた。
タイでのプーンサワット挑戦は、思いがけないものだった。日本タイトルを奪われた直後に王者側からの指名を受けたのだ。キャリア13年目の総決算は、「今度は勝負を賭けさせる」(花形会長)という言葉通りの試合で、木村選手は潔く散った。
これは、「木村は数字以上にパンチがある。問題はハート。打ちながらパンチを避けることを考えるからパンチが死ぬ」という壁に挑戦した試合でもあった。
「勝ちにいっての敗戦」は、木村選手が引退を決意するに十分だったとも思う。しかし、花形会長はどうだっただろうか。「問題はハート」というハードルを越えたことには、満足の気持ちもあったに違いない。
しかし、花形会長の凄いところは選手がやる気になるのを待つところ。なかなか黙って帰って来るのを待てるものではない。
「自分へのけじめ。あの世界戦は自分も悔いが残ったし、会長も同じ思いのはず」
木村選手は、自らの意志でリングに帰ってきた。
『”努力”という言葉が、この世になければ、花形は国内レベルのメーンエベンターにすらなれなかったろう』
出だし2勝3敗。初10回戦昇格まで8敗を記録し、かかった時間が4年3ヶ月。ようやくキャリア初のKO勝利を収めた努力の人は、ここから快進撃で世界挑戦まで突っ走る。これは、練習のたまものだろう。しかし、4度の世界チャレンジは全て失敗に終わる。
そんな花形選手が世界王座を手にした時のレコードは、40勝(8KO)12敗8分。実にプロ11年目の快挙達成だった。そのスタイルは、軽快なフットワークから放たれる、ジャブ、ワン・ツーを中心にした、基本に忠実なオーソドックス・スタイル。
花形イズム。プロキャリア15年目を迎えた木村選手の今後の活躍に注目です。→花形ボクシングジム
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